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「治るまで治療を受けたい」
…交通事故の被害者の方は,多くの方がこう希望されます。
しかし,いつか完治するのであれば,ずっと治療を受けることにも意味がありますが,現在の医学で治しきれないケガがあるということも事実です。
そこで,交通事故処理の実務では,「症状固定」という概念と,「後遺症」という概念で,賠償の問題に区切りをつけようとしています。
「症状固定」という言葉の意味についてはこちらをクリック
症状固定かどうかを決めるのは,医師の意見が全てではありませんが,実際に診察に当たった医師の意見が重要視されるのはもちろんです(なお念のため,保険会社の顧問医が「意見」を述べることもあり,これも医師の意見であることは確かですが,実際に診察に当たった医師の意見のほうが強い説得力があることが多いでしょう)。
したがって,自分の通っている病院の医師が「症状固定です」という意見である場合,それを受け入れるか,受け入れないかの2択になるでしょう。その後の治療の有無についても検討すると,結局は以下のような3通りの方針が考えられます。
症状固定であるとの判断を受け入れ,治療を終了する。
症状固定であるとの判断は受け入れるが,治療は健康保険を使うなどして継続する。
別の医師の元で診察を受け,「症状固定」であるとの判断が妥当なものか意見を求める(セカンドオピニオン)。
もし仮に症状固定ではないとの判断がされるのであれば,転医して治療を続ける。
※但し,3番を選ぶ場合は,加害者側(保険会社であることが多いでしょうが)は通常,治療費の内払いを打ち切り,かつ,その後の治療の必要性について争ってきますので,争うための材料があるかどうかは慎重に検討することが必要になってきます。
セカンドオピニオンを求めた結果,最初の医師の意見のほうが正しかった…という可能性もあるからです。
また,転医するときは,一般的な注意事項として,医師との関係性に注意する必要もあります。
転医する際の注意事項についてはこちらをクリック
症状固定とは,言い換えれば「これ以上よくならない」という意味も含んでいるため,医師としては,症状固定と判断するのには抵抗があるようです。医師としては,患者さんを少しでもいい方向に持っていくのが仕事だからでしょうか…。
なので,時には,保存的治療を半年以上も続けているのに,医師からは今後の見通しについて特段の説明もなく,かえって患者さんが心配になってしまうようなケースもあるようです。
ケガの内容や程度によって,症状固定までの期間は千差万別なので,一概には言えないのはもちろんですが,そういうときには患者さんのほうから,医師に対して「先生,症状固定はいつごろになりそうでしょうか」と聞いてみるという方法もあります。
なぜなら,いつまでも症状固定にならず,延々と治療を受けていると,
・最終的な示談・賠償の話がなかなか進まない(治療費以外の賠償,慰謝料などを受け取れない)
・治療が不当に長引いたなど,相手方から後で反論を受け,慰謝料を減額されたりする
…など,被害者側にとっても不利なことが起きてくるリスクが段々と高まってくるからです。(一方でもちろん,症状固定と判断された場合には,それ以後の治療費・交通費・休業損害は受け取れなくなるということにもなります。)
つまり,症状固定の判断はプラス・マイナスが複雑に入り組んできますので,慎重な判断が必要です。
法律上の概念や,過去の裁判例などを正しく知った上で,正当な賠償を受けられるようにしましょう。
「治療を多く受けると,1日あたり4200円の慰謝料が出る」として,過剰な治療を勧める整骨院もある,と話している被害者の方がおられました。
しかし,本来,不要な治療や施術をすることがあってはならないのは当然のことではないでしょうか…?
まして,自賠責の「1日4200円」という慰謝料は,自賠責でまかなわれる保険金の上限額120万円以内で払われる限りにおいて,の話です。
もし仮に,施術が多数回に及んで施術費がかさみ,施術費だけで120万の枠をすべて使い切ってしまったら,自賠責からは,整骨院には治療費は支払われますが,患者さんには1円も支払われないということになってしまいます(任意保険から慰謝料が支払われる可能性は残ります)。
他方で,ケガの程度がひどく,本当に多額の治療費が必要になった場合には,自賠責の上限120万を超えた範囲であっても,加害者側(の,任意保険会社など)に治療費や慰謝料部分も請求できてしかるべきといえます。
そういう意味で,結局は,ケガの程度に応じて,必要かつ相当な範囲で治療をうけるべき,ということが言えますから,慰謝料の算定についても,正確な知識を持つことが重要です。
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